健康経営とストレスマネジメント

スタッフの西野です。今回は、スポーツに携わる機会が多い私が、スポーツに関わるマネジメントについて健康経営などに合わせて考えてみたいと思います。

 

ストレスと向き合う 

先日、知人とお話していた時に、会話の中で『チック症状』という言葉を耳にしました。私自身はあまり詳しくは知らなかったのですが、ソフトバンクの松田選手が目を頻繁にパチクリさせている動作は、チック症状によるものと言われています。

チック症状とは、チック(突発的で、不規則な、体の一部の速い動きや発声を繰返す状態)が一定期間継続する症状のことで、一種の癖のようなもので、乳幼児期から学童期にかけ、心と体の成長・発達の過程で多くの子どもにみられるそうです。チックには運動チックと音声チックと二つに分類され、松田選手の場合は運動チックです。発症の原因としては、身体的要因と精神的要因が相互に関係しあっていると推定されていますが、厳密には特定されていません。精神的要因で言ったら、チックは“緊張”や“不安”など、ストレスがかかるような場面で症状が出やすいと言われています。知人のお子さんも、中学生で野球をしていますが、その症状が試合中に著明に表れるということでした。

私自身も小学生の頃からずっと野球をやってきたので、この症状がどういうものなのか、すごく気になりました。いざ試合になるとガチガチに緊張していまい、プレーがチグハグになり、ここぞ!という所で自分の力を発揮できないといった経験がありました。私の場合は、チック症状ではなく、“あがり症”のようなものであったと感じています。

どちらも、緊張や不安など心理的なストレスがかかる場面で症状が起きており、競技のパフォーマンスにも影響が出てしまう可能性があります。試合で緊張しない選手はなかなかいないと思いますが、スポーツをする選手である以上、この緊張や不安をコントロールする力も必要になってきます。緊張やストレスといったストレスは必ずしもマイナス面だけに働くわけではなく、過度にあり過ぎるとパフォーマンスに悪影響を与えますが、適度にあることは選手のパフォーマンスをあげることにも役立つとされています。またスポーツ競技によるピークパフォーマンスは適度にリラックスしていて、適度に緊張しているときに得られ、そのピークパフォーマンスが得られる緊張感の度合いというのは、人それぞれであり、一概に言い切ることはできません。適度なストレスであれば、選手にとって良い刺激になり、その刺激があることで選手のモチベーションやパフォーマンスを高めてくれます。

以前の記事でも、ストレスについて触れていますが、ストレスというのは生体内の非特異的な防衛反応であり、ストレスを感じている状態というのは自分を守るための大事な反応で、生きるために必要な反応です。日常生活や仕事をしていく上でも、自分のストレスについてよく知り,適切な対策をとり、ストレスとうまく付き合っていき、気持ちをコントロールしていく力ことが重要です。

 

理想のストレス状態とは

スポーツ競技の場面で選手が受けるストレス、不安や緊張など重圧がかかる場面では、指導者がそれを和らげてやりたい、なくしてやりたいと考えるときがあります。しかし、先ほども述べたように、適度なストレスは私達人間にとっては必要なものであるため、単純に不安や緊張を和らげたり、なくしたりすれば良いというものではありません。それは、何か不安があるために、それを乗り越えようとして頑張るとか、あるいは、緊張しているからかえって身が引き締まって力が発揮できた、というプラスの影響もあるからです。よって、ここで重要な点は、不安や緊張があるかないかではなく、プラス、あるいはマイナスの影響がどの程度で生じるかということです。

そのことについて、不安や緊張が適度の場合は行動の効率が最も良く、それによって良い成績があげられ、それ以下でも以上でも成績は低下するということです。これをスポーツ心理学では逆U字曲線で表されています。
縦軸が上がるごとに、よいパフォーマンスで、横軸は、原点に近いほうが緊張状態、離れるにしたがってリラックス状態を指しています。その両軸の間で曲線は山型、つまり逆U字を描いています。つまり、よいパフォーマンスを生み、集中力がもっとも高まる精神状態は、緊張や不安は低すぎても高すぎても良い競技成績を残すことが難しく、ほどよい緊張とほどよいリラックスがいいパフォーマンスを生み出すということになります。

このことから、競技場面で指導者は、選手がどんなときに緊張や不安を増すか、そして、それらのストレスを適度なものにするにはどのような働きかけをするべきか、考えないといけないのです。これはスポーツだけではなく、仕事においても同じことが言えます。

 

管理者とストレス状態の把握=健康経営

スポーツを仕事に置き換えると、指導者は管理者になります。選手はその部下になります。管理者=指導者にとって必要なことは、自分が活躍することよりも、部下=選手が活躍し、業績=成績を上げることです。これは、『管理者に求められる能力は、リーダーシップではなく、マネージャーシップであり、部下をマネジメントしていく必要がある』ということです。私自身、もし自分が管理者という立場だったら、部下のことをどのようにマネジメントしていったら良いだろうかと考えてみました。いろいろなマネジメントの方法があると思いますが、まず大事な事、取り組めそうな事としては、部下とコミュニケーションをとっていくことだと思います。

そして、このコミュニケーションが、部下の健康状態や心理状態(ストレスやモチベーションなど)を把握することにも繋がります。

部下のストレスは管理者のコミュニケーション次第で良くも悪くもなります。管理者は普段から部下とのコミュニケーションを大切にして、部下のストレスサインを見逃さず、そのサインに適切に関わる姿勢を持つことが大切です。

しかし、部下自身も自分のストレスを管理者のマネジメントだけに頼っているわけにもいきません。セルフコントロールもしていかなければいけません。そして、管理者にも目を配る必要もあります。管理者も1人の人間ですし、部下よりさらに大きなストレスを抱えている可能性があります。部下も管理者に気を配る、コミュニケーションを自らとることも必要です。それが組織、チームというものです。

野球で例えると、「監督は選手のために、選手は監督のために」です。「one for all ,all for one」の精神をもってみんなが会社でそれぞれの役割を果たすことが、良い会社・組織を作り上げ、健康経営につながるのだと思います。

 

終わりに

冒頭に話をしていた、中学生の野球をしているお子さんの事ですが、私が今1番応援している野球少年です。小さい頃から知っていて、今が彼にとって一番しんどい時期かもしれません。いろいろ悩んでいると思います。でも悩んだ分だけ、彼を成長させていってくれると思います。そして、彼を見守っているお母さんもまた応援していきます。これからも、自分の経験した事や考えを伝えていけたらいいなと思っています。辛い経験や努力した結果は自分を成長させてくれるはずです。これからもずっと応援していきたいと思います。

 

ライター:西野大助

富山医療福祉専門学校理学療法士学科卒業

【理学療法士】

リハビリ専門職である理学療法士国家資格取得後、約10年富山県内の総合病院で急性期医療から回復期医療、在宅医療のリハビリに従事。その後SUDACHIに入社。パーソナル事業部の責任者を務め、主にパーソナルトレーニングや集団でのパフォーマンス指導や姿勢指導、傷病予防などの分野を担当している。また、病院在籍中から現在にかけてスポーツ分野での障害予防などにも積極的に取り組んでいる。

最近結婚し、仕事でも家庭でも頑張ろうと意気込んでいる。