前回の記事では、健康経営と健康管理について、自己管理の観点から1人で取り組むのではなく、チームで取り組む必要性について述べました。
医療に当てはめると、自己管理は予防意味合いが強い分野であり、自己管理が不十分になり病気を発症してしまうと、健康管理は「疾病管理」へと治療の意味合いが強くなってしまいます。
今回も健康経営における本丸、健康管理について予防と治療の観点から考えてみたいと思います。
健康管理と疾病管理
健康管理とは、疾病を予防し、健康を保持、増進するという目的を達成するために行なわれる管理のことで、個人の保健行動と、専門家の保健活動とによって達成されます。
健康管理は広義と狭義に用いられ、広義の健康管理は狭義の健康管理と疾病管理とが包含され、健康現象全般が対象になります。健康管理の場としては、地域、学校、職場などが主になるが、個人の生活全体をとらえるためには、個々の集団における健康管理だけでなく、それぞれが連携を保った一貫した体制が必要であるとされています。
出所)ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
この定義から紐解くと、先述のように「健康管理」の予防の側面と「疾病管理」の治療の側面に分けることが出来ます。
一旦病気を発症してしまうと、会社や社員自らの判断だけでは管理を実行することは大きく困難となり、医師や専門職のアドバイスが必要となってしまいます。それには多くの金銭的コストや時間的コストがかかり、個人的にも会社にも大きな影響を与えることになります。
例えば2型糖尿病。
糖尿病の診断基準は早朝空腹時血糖値や75gOGTT、随時血糖値、HbA1cなど様々な検査によって定められています。血糖値は食事の時間によって大きく左右されるので、色々なパターンで血糖値を測定します。
糖尿病と診断される値は、以下の通りです。
①早朝空腹時血糖値126㎎/dl以上
②75gOGTTで2時間値200㎎/dl以上
③随時血糖値200㎎/dl以上
④HbA1cが6.5%以上
上記①~④のいずれかが確認された場合は「糖尿病型」と診断
⑤早朝空腹時血糖値100㎎/dl以下
⑥5gOGTTで2時間値140㎎/dl以下
上記⑤と⑥の血糖値が確認された場合には「正常型」
いづれにも属さない場合には「境界型」と診断されます。
糖尿病の完治を目指す場合、これらの糖尿病の診断基準である、血糖値やHbA1cの値を正常値に近づけていくことが大切となっていきます。
その対策は、内服を始め、運動や食事療法といったことが必要となり、金銭的コストと時間的コストをかけることになり、個人にとっては大変な負担となります。糖尿病と向き合いながら生活していく必要があるのです。
また、糖尿病を患っていると、糖尿病を患っているとうつ症状を呈しやすいことがわかっており、メンタルヘルス面でも対策が必要となってくる可能性があるのです。そうなると個人の負担だけではなく企業へ活動での負担も出現してきます。
従業員の健康コストの構造
*出所:Dee W.Edington and Wayne N.Buton(2003)より作成
このように、健康管理が疾患管理になると、一気にその負担が大きくなることを、個人も企業も理解する必要があります。
健康経営と健康管理
健康管理が疾病管理へ移行しないようにするためには、自己管理をしっかりと実践していく仕組みと、企業が社員の健康に気を遣い、実践していく必要があると考えます。
自己管理を実践していく仕組みは、前回の記事「健康経営と健康管理」でも述べたように、個人で考えるのではなく、周囲を取り込み、チームで実践することが必要となります。
一方、企業が社員の健康を気遣うこと、これが「健康経営」そのものであると弊社は考えます。そこから社員の会社に対する帰属意識=エンゲージメントが充実し、結果的に生産性は向上していきます。
健康経営とは、
「企業が従業員の健康に配慮することによって、経営面においても大きな成果が期待できる」との基盤に立って、健康管理を経営的視点から考え、 戦略的に実践することを意味しています。
この健康に配慮することによって、経営面=企業業績においても大きな成果が期待できることを模擬的に体験できるのが、弊社の「ビジネスゲーム:健康経営ゲーム」です。
健康が以下に個人と企業にとって大事であるかを、気付き、実践していく事をビジネスゲームで学ぶことから健康経営について考えてみるのも1つです。