スタッフの西野です。
先日、スポーツ障害に関する事例検討会に参加しました。検討会には富山県で働いている理学療法士が40名ほど参加されていました。検討会ではスポーツ障害の事例について、障害の原因や発症メカニズム、治療や予防法について意見交換がされました。経験豊かな理学療法士の方々の意見や考え方を聞くことができ、大変有意義で楽しい時間でした。
今回はスポーツと予防の観点から健康経営について考えてみます。
スポーツと怪我
スポーツと怪我は常に隣り合わせにあります。スポーツをしている選手が大きな怪我やスポーツ障害を悪化させてしまった場合は、その後の競技生活が制限される事になります。競技に復帰するまでには時間もかかり、競技や試合から遠ざかることになるため、選手にとってはとても辛いことです。たとえ競技復帰しても、ベストなパフォーマンスを出せずに大会や選手生活が終わっていくことも多いです。私もそういう経験があるので、怪我をした選手の気持ちは痛いほど分かります。
前回の記事では予防医学についてお話しましたが、スポーツにおいても予防という視点が大切になってきます。しかし、選手自身がどうして怪我をしてしまったのか自己分析・解決できる方は少なく、怪我をする前に、回避する手段・予防方法を認知?している選手も少ないのではないでしょうか。
そのような理由から選手は、スポーツドクター、専門のトレーナー、メディカルスタッフなど専門家のチェックを受けることにより、怪我の原因となる動作や身体的特徴を分析し、分析した結果からみつかった原因や課題に対して、治療やトレーニングを受けていくことで、本当の意味でのスポーツ障害の治療・予防に繋がっていきます。怪我をしたら、治るまで安静にする、我慢する、ただ手術を受けるといったことでスポーツ障害を防ぐことができないのは言うまでもありません。
何度も言いますが、選手にとっては、怪我をする以前に怪我に原因となる動作や身体的特徴が明らかになっていることがベストなのです。スポーツ障害は早期発見・治療、予防が生命線です。
ただし、スポーツをしている選手や普通の方が障害や病気をする前に病院などの医療機関を受診し、メディカルチェックを受けることは、とても難しいことです。選手も普通の方も、少し痛みや体調の不調があっても、軽い症状では我慢もするでしょう。特に対策もしないまま、そのまま競技や生活を続けることが多いのではないでしょうか。
スポーツと予防
今は至る所で、スポーツ選手のメディカルチェックや予防検診が行われるようになってきました。野球の分野では、超音波画像装置という医療器材を使用することで、簡便に肘や肩の軟骨の状態を診ることができるようになってきました。
投球による肘障害には様々な病態がありますが、離断性骨軟骨炎(りだんせいこつなんこつえん)という肘の軟骨障害は、この病気は軟骨の下の骨がはがれてしまう病気で、はがれてしまった骨軟骨の破片は関節ネズミなどと呼ばれます。小学生・中学生でも手術にまで至る可能性のある病気として重要です。この病気の恐ろしいところは、“沈黙の障害”ともいわれるように症状が強くでないわりに、病気そのものがどんどん進行してしまいます。
つまり、大切なのは、この離断性骨軟骨炎を早期に発見することなのです。これは医療スタッフ側がいかに選手・指導者・保護者側に啓発活動を行い、病気を知ってもらうことが野球肘障害の早期発見・予防に繋がっていきます。私自身も、高校生の時に手術をして下さった医師からお誘いもあり、富山市の少年野球リーグの野球肘検診に参加させていただいています。
また富山県の理学療法士協会主催で高校球児に対して、野球講習会を県内の理学療法士の方々と行っています。このような活動に参加して、「自分が現役選手の時に、こんな事知っていたら良かった、こんなスタッフの人と関わってもらえたら良かった」と感じることもありましたが、今は障害予防の重要性を知ったことで、いろいろな選手に障害予防について知ってもらい、ベストな状態で練習や試合に臨めるように支援できていることを嬉しく思っています。
過去の記事でもスポーツ障害について、記載させていただきましたが、スポーツ障害は、オーバーユース(使い過ぎ)や、筋力不足、柔軟性不足、不良なフォームや過度な体の使い方、疲労の蓄積、ストレスなどが原因はさまざまですが、必ずどこかに原因が存在します。その原因を導き出し、選手本人に理解してもらうことが、障害予防の第一歩になります。現代のスポーツ科学では様々なデータが集まっているため、どうなると怪我の発生リスクが高まるかなどもいろいろ分かってきています。今のスポーツ医科学も目を見張るものがあります。ただ、先ほども述べたように、スポーツをしている選手や普通の方が、自ら障害や病気をする前に病院などの医療機関を受診し、メディカルチェックや検診を受けることは、とても難しいことです。スポーツ選手も普通の方も、少し痛みや体調の不調があっても、軽い症状では我慢もするでしょう。特に対策もしないまま、そのまま競技や生活を続けることが多いのではないでしょうか。
予防医学においても、同じようなことが言えます。脳梗塞や糖尿病などになる前に発生のリスクを知り、日々の生活で意識し、生活習慣に気をつけていくことで健康な生活を送ることができます。
健康経営と予防
企業でも健康診断やストレスチェックがありますが、それでは対応が遅い場合もありますし、特定の障害や病気の発見は精密検査や専門家の診察や診断を受けない限り、早期発見は難しいです。鬱の話になりますが、鬱の症状は自分での自覚症状を感じることも難しい病気と言われています。鬱にもいくつか兆候はありますが、見逃してしまうケースも極めて多いと言われています。ただその兆候・初期症状を少しでも知ることができれば、早期発見・早期治療に繋がりますので、個人や会社側は鬱の兆候・初期症状を知っておく必要があります。
病気の予防や早期発見を行うことで、企業は社員を守ることが出来、結果企業業績も向上することが期待できます。この予防の考え方こそ健康経営に必要な部分ではないでしょうか?
わが国でも「健康の維持・増進」 に大きな関心が寄せられるようになってきました。企業の健康対策においてもこの傾向は顕著に現れており、疾患の早期発見・早期治療のために、日常的な健康管理に力を入れるようになってきています。個人、そして企業側の予防への意識や知識が高まり、健康経営を実践し、多くの人が、病気になる前に健康について考えるきっかけが増えることを期待しています。
ライター:西野大助
富山医療福祉専門学校理学療法士学科卒業
【理学療法士】
リハビリ専門職である理学療法士国家資格取得後、約10年富山県内の総合病院で急性期医療から回復期医療、在宅医療のリハビリに従事。その後SUDACHIに入社。パーソナル事業部の責任者を務め、主にパーソナルトレーニングや集団でのパフォーマンス指導や姿勢指導、傷病予防などの分野を担当している。また、病院在籍中から現在にかけてスポーツ分野での障害予防などにも積極的に取り組んでいる。