健康経営とメンタルヘルス⑥

今回はまた違う観点から健康経営とメンタルヘルスについて考えていきたいと思います。

メンタルヘルスといえば心の問題と捉えがちですが、実は心の問題だけでは考えることが出来ないデータが最近出てきています。

今回は、第61回日本職業・災害医学会学術大会で発表された、「職域における生活習慣病の現状と課題」から健康経営と生活習慣病、メンタルヘルスについて考えていきたいと思います。

 

生活習慣病とメンタルヘルス不調との関係

5大疾病に精神障害が加わり、精神障害は治療すべき疾患の 1 つとなりました。残り4つは、がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病ですが、これらは生活習慣病として位置づけられています。

第61回日本職業・災害医学会学術大会で発表された、「職域における生活習慣病の現状と課題」によると、

同一の生活習慣が元で生活習慣病と精神障害をきたす、精神障害に罹患することで生活習慣の変容を介して生活習慣病に陥る、そして、生活習慣病が原因となって精神障害を呈することもある。 このように生活習慣病と精神障害は密接な関係がある。と報告されています。

具体的には、

・生活習慣病の代表格である糖尿病と気分障害との関係を調べた39の研究のメタ解析の結果、糖尿病患の11%が大うつ病性障害、その他のうつ症状を呈するものが31%存在していたことがわかり、うつ病と糖尿病との関わりの深さを改めて認識された。

・精神科外来通院患者におけるBMIや腹囲基準値からみた上半身肥満の頻度の調査研究では、BMIが25㎏/㎡以上の肥満は男性 38.6%、女性43.6%であり、精神障害患者で高頻度であった。

・ストレスが加わると、アドレナリンが放出され血圧が上がることが知られている。また降圧剤の影響では、うつ状態を誘発する可能性のある薬物もあり、症状として、悲哀感よりも、意欲低下や無気力と言った精神運動抑制症状が特徴である。

・最も病気と関連があると言われている生活習慣の1つとして喫煙がある。肺がん、慢性閉塞性肺疾患はもちろんのこと、心筋梗塞、狭心症などの心血管系や脳循環系にも影響を与えることは疑いのない事実である。この喫煙習慣であるが、不安、抑うつ状態が引き金になって喫煙が始まることが知られているように、精神障害を抱える人でよく見かけられる。

・睡眠がメタボリックシンドロームに与える影響としては、睡眠時無呼吸症、シフト勤務による不規則な睡眠、睡眠不足によって、インスリン抵抗性、腹部肥満、脂質代謝異常、高血圧に影響を与えるとの報告がある。

などといった、生活習慣がメンタルヘルス不調に寄与する関係性について述べられており、「職場の管理者はメンタルヘルスの重要性を理解し、配慮をしていくことが望まれる」、と結論づけています。

出所)日本職業・災害医学会会誌 JJOMT Vol. 62, No. 5

 

生活習慣の是正と心身への影響

また、同学会紙では、メンタルヘルスを考える上で、ライフスタイルにおけるメンタルヘルスに注目し、ライフスタイルを見直すことの重要性が軽視されている現状を指摘し、運動、食事、喫煙、酒の4つの面に気をつけることは、精神療法や薬物療法を受けるのと同程度の効果があるとも述べています。

具体的には、

1)適度な運動は、気分を明るくし、不安を改善 させ、認知機能の向上につながる

2)野菜、魚、果物を十分に摂ることは、抑うつや統合失調症の精神症状の軽減につながる

3)自然と触れ合うことを通して、好ましい認知機能の維持ができる

4)良好な人間関係は、身体病の発症リスクを抑える

5)レクリエーションなどで楽しみ機会を増やすことによって、社会的機能が向上する

6)リラクゼーションやストレスを管理することは、不安、不眠、パニックの治療に有効である

と述べています。

その他、適度な運動が健康には欠かせないことは、デスクワークが中心な労働者では理解されているが、身体を使う肉体労働者では、既に職場で体を動かしているので、運動の必要性を実感していない。運動による効果は、単に体を動かすことによる筋力の増強、カロリーの消費のみならず、そこから生じる情緒的反応などもあり、業務で身体を使うのと、ここでいう運動は別物であるとも述べています。

出所)日本職業・災害医学会会誌 JJOMT Vol. 62, No. 5

つまり、生活習慣病とメンタルヘルス不調は、非常に強い関係性があり、生活習慣を見直すことでメンタルヘルス不調を予防できることを示唆しています。また、自然との触れ合いや良好な人間関係といったコミュニケーションがやはり重要であると読み取ることが出来ます。

 

メンタルヘルス研修として

「ビジネスゲーム:健康チェックカード-心技体-」では、上記の生活習慣に関わる要素を「心」「技」「体」の3つに分け、健康管理の仕組みを楽しく行える内容となっています。

健康チェックカード-心技体-では、50枚からなるカード化された設問に答えることで、参加者一人一人の健康状態を数字にして測定することができます。単純な口頭で質問に答えるだけのチェックではなく、自分の身体を動かして、その反応を確認して点数を付けるので、通常の健康チェックとは異なった退屈させない作りになっています。指定されたポーズを取ることは簡単で身体への負荷もありませんが、「指示と違う動きになってしまう」「思うように身体が動かない」という意外な経験をすることで、知らず知らずのうちに自分の身体が不健康になっていたことに気づくのです。

この「気づき」を簡単に得られることに、大きな意味があります。通常の健康診断などでは数字だけで中々実感が得られにくいのですが、実際にできる人とできない人に別れるのだと目の当たりにすることで、自分の健康に関心が向きます。そして設問ごとに記されている健康増進のための改善策を、強烈に意識させられるのです。

さらに、「ビジネスゲーム:健康チェックカード-心技体-」では、仲間と楽しく行うことと競争の原理から「本人の健康意識の意欲向上」が起こり、カードに記載されている具体的な改善指針と100点満点というわかりやすい健康状態の見える化から「具体的な目標の明確化」を実行でき、仲間と行う楽しさと競争から「継続的に実施できる仕組み作り」を作り出せるため、生活習慣を楽しく見直すきっかけとなるのです。

生活習慣を見直すことで、メンタルヘルス不調を防ぐことの理解を持ち、企業活動におけるメンタルヘルス不調の予防にSUDACHIは寄与していきます。