健康経営の重要点の一つは、職場内での円滑なコミュニケーションであると弊社は考えています。
弊社代表は総合病院勤務時代に医療安全対策委員会に配属されていた経緯もあり、健康経営にとって重要であるコミュニケーションが、医療や介護の現場の医療事故と深く関係性があるのではないかと考えています。
その理由は、医療事故の大半は、医師やコメディカルの専門的な技術=テクニカルスキルによるものではなく、コミュニケーションなどの=ノンテクニカルスキルが原因で起こっているものが多いからです。
今回は、健康経営とノンテクニカルと題し、医療や介護福祉の面から考えていきたいと思います。
医療事故の原因
出所)医療事故情報収集等事業平成27年度年報を参考に作図
公益財団法人日本医療機能評価機構が公表している、医療事故情報収集等事業平成27年年報によると、医療事故の半数以上が、
「確認を怠った、観察を怠った、判断を誤った、連携ができていなかった」
といった論理的思考やコミュニケーションなどに起因する、いわゆるノンテクニカルスキル不足によるものが多かったと報告しています。
医療現場のチームビルディング
一般的に、医師や看護師、理学療法士などといった専門職の養成学校(大学や専門学校等)では、それぞれの専門的な知識や技術=テクニカルスキルを学ぶことに多くの時間を費やします。もちろん、実習期間を通してコミュニケーションや接遇などといったノンテクニカルスキルについても学ぶ機会はありますが、学生の目線からすると、専門職になるための勉強であるため、その知識や技術の吸収は不十分であることが多いのが現状です。
私も、以前の職場で、新入社員の相談を多く受けた経験があります。そのほとんどが、テクニカルスキルではなく、患者様とのコミュニケーションに悩んだり、他職種とのコミュニケーションに悩んだりするものでした。
特に医療業界におけるスタッフの関係は、上司⇄部下といった関係だけでなく、そこに「医師の指示の基」といった法律の大前提があります。学生のうちから「医師の指示の基」といった情報を刷り込まれているため、どうしても医師とのコミュニケーションに対して自分の意見を伝えることができないといった場面が多くあります。
しかし、医療も一人の力でどうにかできるものではなく、チーム医療といった言葉が浸透しているように、チームとしてのまとまり=チームビルディングが必要となります。その中で、「医師の指示の基」といった大前提があるなかでも、それぞれの専門的知識が技術がその患者様にとって最も適切であると判断された時には、リーダッシップを発揮し、チームを先導していく能力が必要となります。
健康経営とノンテクニカルスキル
論理的思考や判断力、コミュニケーションなどといった医療現場でのノンテクニカルスキルは、医療人における基礎=土台となるものです。
良好な医療や介護を提供する上で、良好な医療チームや介護チームの形成は欠かすことができません。
医療や介護の現場での良好なチームを定義づけすると、
「患者様にとって、最も適切な治療やサービスを提供することができること」と弊社は考えています。医師が先導するのか、看護師が先導するのか、患者様の状況によっては異なる場面が多く出てきます。その場面に出くわした時に、率先してリーダーシップを発揮できる環境、そしてそのリーダーシップを周囲のスタッフがフォローできる環境が必要であると考えます。
この考えは、まさに健康経営の土台であるコミュニケーションと一致するものであると捉えることができます。
さらに、患者様へ良質な治療や介護を提供するには、医療・介護チームスタッフ自身が健康でなければ良質な治療が出来るはずがありません。医療や、介護に携わる企業こそ、健康への配慮が必要なのです。