今までの記事で、健康経営にはコミュニケーションが必要であると何度もお話ししてきましたが、健康経営とコミュニケーションに絞って考えたことはありませんでした。
今回は、コミュニケーションに絞って健康経営について考えてみたいと思います。
特に昨今ではSNSやIT技術の発展により多様なコミュニケーションが生まれてきています。とても便利になった反面、意外な落とし穴も私自身経験しています。
実体験などから健康経営とコミュニケーションについて考えていきたいと思います。
健康経営に必要なこと
「健康経営」とは、米国の経営心理学者のロバート・ローゼンが提唱した概念で、企業の持続的成長を図る観点から従業員の健康に配慮した経営手法のことです。ローゼン博士が提唱した、健康経営・ヘルシーカンパニーの考え方のポイントとして以下の4点が重視されています。
1.従業員の健康に対するライフスタイルへの影響
2.従業員の健康に対する労働環境への影響
3.組織の収益性に対する従業員の健康度への影響
4.従業員の健康と組織の利益に対する家族、同僚、余暇などへの影響
上記を踏まえた上で、従業員の健康増進と生産性向上の両方に活用できる基本戦略が2つあると示しています。
① ストレス管理や禁煙、高血圧のコントロール、栄養管理・教育、ウエイトコントロール(体重管理)プログラムなど、健康と予防の機会を提供し、従業員の疾病に対する抵抗力を高める戦略
② 人的資源政策及びプログラムを通じて、健康増進と生産性向上につながる労働環境をつくりあげる戦略
この2つの戦略を組み合わせることによって、最も健全な究極の会社を確立できるとしています。
引用・参考文献:ヘルシー・カンパニー―人的資源の活用とストレス管理,ロバート・H. ローゼン (著), Robert H. Rosen (原著), 宗像 恒次 (翻訳), 産能大学メンタルマネジメント研究会 (翻訳)
もっとも必要な事は
上記2つの戦略を実行する上で、最も必要な事は何でしょうか?具体的に何を実行していけばよいのでしょうか?
1つめの戦略は、研修やセミナーなどの手法を用いて実行されることが多い戦略です。メンタルヘルス研修や喫煙の害のセミナー、栄養についてのセミナーなど多岐にわたります。確かに、健康に対してもその他の知識や技術に関しても、研修やセミナーなどの手法は、多くの人にその知識や技術を教える手段としてもっとも優れている手法です。しかし、受験勉強などと同様に、1度研修を受けたからといって知識技術が身に付くことはありません。これは、エビングハウスの忘却曲線(節約率の観点もある)に代表される、人はすぐに忘れる生き物であるということが関係しています。1度受けた研修などを、復習したりする環境や仕組みがあるかが重要になってくるのです。
2つめの戦略は、産業医との連携やウォーキング大会などのイベントなどの手法を用いて実行されることが多い戦略です。この手法も、1度実行すれば結果がでるというものではなく、継続してチェックしたり、実行していくことが求められます。
1つめの戦略、2つ目の戦略共に復習したり、継続したりする仕組みが必要ですが、この仕組み化にもっとも必要な事がコミュニケーションであると弊社は考えています。
私の経験からも、1つの目標に対して戦略を立て実行していくときには、自分一人ではできません。ましてやその規模が大きくなればなるほど様々な情報を把握しあえる環境が必要になります。コミュニケーションに重点をおき、コミュニケーションをとりやすい環境に職場環境を整える企業も出てきています。例えば、会議室での席次の配置の工夫や緑化だけではなく、会社の中にカフェやお菓子などを置くスペースを置くことによって、そこに人が集まり円滑なコミュニケーションが図れる仕組みを作ったりしています。一部の企業では、コミュニケーションが生産性を高めるもっとも大切であることであると理解し実践しているのです。
コミュニケーションの実際
一方で、昨今のSNSやIT技術の急速な進化によって、コミュニケーションの方法が大きく変わってきています。
1つ事例を紹介すると、ラジオ番組で紹介されていたことですが、学生のレポート提出の仕方が変わってきているというのです。レポート提出を「E-mailで」と指示したという教授。学生からは、「教授E-mailって何ですか?LINEでいいですか?」という返答があり、実際にLINEでのレポート提出があったというのです。
また、今では働く人のほとんどがパソコン画面に張り付いている職場も多く、隣に座っているのにチャットで会話をするということも珍しくない時代となりました。
これらのことは、決して悪いということではありません。コミュニケーションの方法が変わり、業務の効率化や多様なコミュニケーションが生まれることによるイノベーションにもつながったという事例もあるほどです。
しかし、私自身の体験や周囲の体験から、SNSやIT等のデジタルでのコミュニケーションが抱える問題の1つに、「感情」がうまく伝わらないということがあります。例えば、今では当たり前となった絵文字や顔文字、スタンプなどは感情を表すツールですが、ビジネス上ではあまり多く使われることがありません(私や周囲だけかもしれませんが)。そうすると、文脈だけで発言の感情を読み取る必要性が生じます。本人は、冗談で記載している文脈でも、受け取った当人が冗談であると受け取らない文脈もあります。そうなると誤解が生まれ、そこには不満と不安が残り、良い関係性は一瞬にして崩れます。その他、今では大変便利となったSkype。パソコン画面上で顔と顔をみて話しているにも関わらず、実際に会って話した方がクリエィティブで身のなる会議や話が出来たということを皆さん経験したことはないでしょうか?
バーバルコミュニケーション(言語的コミュニケーション)とノンバーバルコミュニケーション(非言語的コミュニケーション)とよく言われますが、相手への印象はおよそ9割がノンバーバルコミュニケーションによるものともいわれているとの報告もあります。今回は触れませんが、そのノンバーバルコミュニケーションにも様々な要素があり、その要素があるからこそ、実際に合って直接コミュニケーションをとることが重要であるといえます。
ビジネスゲームとコミュニケーション
このような背景のもと、弊社ではビジネスゲームという手法を用いて健康経営や健康に対する研修を実践しています。
ビジネスゲーム「健康経営ゲーム」と笑いでも述べたとおり、ビジネスゲームはゲームの要素を含んでいることから、自然と遊びながら夢中になるといった楽しさがあります。
「ビジネスゲーム:健康経営ゲーム」はチーム間の協力と競争の要素が合わさっており、研修をスリリングなゲームにしています。この「楽しさ」は参加者たち自身で作り上げていくものであり、研修終了後に深い満足感を与えてくれます。
また、この「健康経営ゲーム」は、1チームの力のみでは決してクリアができない仕組みで作られており、他チームと協力することで初めて成果を上げられます。コミュニケーションがゲームのカギとなっているのです。そのため自然に対話と相互理解が促され、チームビルディングに必要な「楽しさの共有」と「相互理解と協力」を「健康経営ゲーム」は備えているのです。
そして、あえてデジタルではなくカードゲームというアナログな手法を用いていることが大きな特徴です。
前述したとおり、アナログ(実際に会って会話し協力し合うこと)で生まれる会話には、感情がしっかりと表れます。身振り手振り、考える間、動きながらの行動など全てがコミュニケーションとなるのです。さらに、そこに個人の性格が出ることによってより深いコミュニケーションが生まれます。このような体験は、デジタルの世界では得る事が出来ない体験です。
そして、デジタルの世界だけでは構築することができないものが、企業の考え方や文化、つまり「企業文化」と呼ばれるものです。働く人の健康が、企業の業績を伸ばすのであるといくら数値であらわしても、そこに集う人が良好なコミュニケーションを図れていなければ絵に描いた餅となってしまうのです。
SNSやIT技術の進歩により、便利になったコミュニケーションの方法をうまく使い、且つ、アナログのコミュニケーションをどう使用していくかが、今後の企業経営の課題の1つだとSUDACHIは考えます。