身体に良くないとされている喫煙。
今では、分煙や禁煙などが社会的にも進められ、実生活においても、喫煙の健康に対する影響について、意識や認知度は高まってきていると感じます。
今回は健康経営や健康と喫煙に関して考えてみたいと思います。
喫煙の害について
そもそも喫煙は身体に害であることは今や多くの方が周知のところです。しかし、どんな害があるか詳しく分かるといった方はまだまだ少ないかもしれません。
リハビリテーションの分野でも喫煙と運動の関係性は重要な環境因子として評価項目に挙げられます。
そんな喫煙の害を少し整理してみたいと思います。
煙草の煙には、約4,000種類の化学物質が含まれており、その中には200種類以上の有害物質が含まれ、さらに発がん性物質は50種類以上含まれているとされています。
もっとも有名な物質はニコチンやタールですが、その他にも殺虫剤にも使われるヒ素、イタイイタイ病の原因物質ともなったカドミウム、排気ガスにも含まれる一酸化炭素なども含まれています。
これだけでも、イメージとして身体に悪いのだなと理解できます。
さらには、喫煙者は非喫煙者と比較すると、寿命が10年短くなるといったデータもあります。これは、前述の有害物質が引き起こす様々な疾患が」影響しているのかもしれません。
ましてや、喫煙者の煙を周りの人が吸ってしまう受動喫煙でも、身体への悪影響を与えてしまいます。喫煙者が気をつけなければ、大切な周囲の人へ迷惑をかけてしまっているということになります。
煙草と依存症
有害物質の中でも依存性があるものがニコチンです。
ニコチン中毒という言葉は昨今認知度が高まっていますが、その依存性の強さについてはまだまだ理解が進んでいないのが現状です。
リハビリテーションの場面でも「煙草なんかすぐやめられるよ!」と話しされる方は多いのですが、実際のところご病気になっても煙草をやめられない方が多数を占めます。
病気になっても止めることができない。それほど、依存性が強いということをまず理解することが重要です。
医療業界では有名ですが、ニコチンは危険薬物でであるヘロインやコカインよりも依存性が強いことが知られています。
それほど喫煙する方が禁煙するには大変であるということです。
そもそも喫煙する方は、煙草を吸うとスッキリするといった効果でやめられないという声を聞きます。これは、煙草を吸うと快感を感じるドパミンが放出され、気持ち良い、安心するなどといった感覚を得ることができるためです。しかし、この作用は一時的なもので、約30分程度で体内のニコチンが切れてしまうと反対にイライラする、落ち着かない、気分が落ち込む、集中できない、不安を感じるなどといった精神面への影響も高まります。
これはリハビリテーションの場面で向き合うことが多いパーキンソン病(ドパミンを生成する中脳黒質の変性疾患)の方にも共通する症状です。
こうなると、仕事の生産性は低下することは安易に想像できます。作業で疲れたから休憩する→休憩で煙草を吸う→休憩後にはニコチンが切れる→イライラしてくる→仕事効率が下がった(疲れた)と感じる→休憩で煙草を吸うといった、悪循環モデルが成り立ちます。
個人にとっては健康への悪影響が、企業には生産性の低下が懸念されます。
煙草を止めるには?健康経営と卒煙外来
上記のように、自分の意思ではやめられないのが依存症であり、喫煙=ニコチン中毒です。まずは喫煙はニコチン中毒であり、病気であると理解することが大切だと考えます。
病気であれば、医師に診察してもらうといったスキームが自然と考えつきます。
昨今では卒煙外来といった専門外来を立ち上げている医療機関も多くなりました。
卒煙外来に通ったからといって、確実に禁煙できるといったわけではないかと思いますが、これも個人の節制や我慢に頼らない仕組み化の1つであると言えます。
このような卒煙を、健康経営の一環として応援している企業もあります。
トヨタ紡織様では、健康保険組合と共催で、禁煙外来を使い「卒煙」した従業員に1万円を上限に補助するという「禁煙外来利用補助」を行っています。そのほか、喫煙者と援助者がペアになって禁煙にチャレンジする「禁煙マラソン」も開催。第1回60日間、第2回60日間、第3回90日間が開催されました。この結果、トヨタ紡織の喫煙率は2011年度の37.4%から2015年度は35.0%にまでダウン。なかなかの効果を出しているようです。
引用:HUFF POSTより
「百害あって一利なし」。健康を考える上で、喫煙にはこの言葉がもっとも当てはまるといっても過言ではないでしょうか?