健康経営とメンタルヘルス②

前回の記事、健康経営とメンタルヘルスでは、メンタルヘルス不調に陥った際の職場復帰のルールがあるか?などについて紹介させていただきました。

今回は、同じく政府が公開しているデータから健康経営と、メンタルヘルス対策に対する取り組みについて、考えてみたいと思います。

 

メンタルヘルス対策に取り組んでいるのか?

メンタルヘルス対策の取組の有無及び取組内容別事業所割合

政府が公開している、平成25年労働安全衛生調査(実態調査)によると、メンタルヘルス対策の取り組みの有無及び取り組み内容別事業所割合は、安全衛生委員会等での調査審議、計画の策定と実施、対策の実務を行う担当者の選任、労働者・管理者への教育研修、情報提供、保健指導によるケアの実施、ストレスチェックなど様々なものがあげられます。しかし、メンタルヘルス対策に取り組んでいないという企業は39.1%と、約4割もの企業が回答しています。

 

なぜ取り組んでいないのか?

メンタルヘルス対策に取り組んでいない理由事業所割合

メンタルヘルス対策に取り組んでいない理由としては、該当する労働者がいないが39.0%、取り組み方が分からないが25.3%、必要性を感じないが21.8%、専門のスタッフがいないが19.4%、労働者の関心がないが7.1%、経費がかかりすぎるが2.0%となっています。

この結果から、筆者の経験を照らし合わせて筆者の意見を述べると、該当する労働者がいない、必要性を感じないからという回答は、本当にそうだろうか?と問いかけたくなります。

筆者自身、前職の職場内で大切な仲間がメンタルヘルス不調となった経験をしています。その時、まさか「あの人が」と思ってもいなかった仲間がメンタルヘルス不調に陥ってしまったのです。まさに、「該当する労働者ではないと筆者自身が思い込んでいた」のです。その結果、仲間の変化に気づくことができず、大事な仲間がメンタルヘルス不調に陥ってしました。

1度メンタルヘルス不調に陥ってしまうと、社会復帰や元の生活に戻ることは困難となります。前回の記事でも取り上げたデータに、1度メンタルヘルス不調に陥ると、約半数もの人が職場復帰できないという現状が浮き彫りになっています。そうなると、以前の記事「健康経営とコスト」でも記載した通り、個人にとっても企業にとっても大きな損失となります。

上記の結果のように、経費がかかりすぎるからという理由は2.0%にとどまっており、求職者がでた時にかかるコストは1,525万円との試算もあるくらいですから、大きな損失を招く前に対策が必要なのです。

つまり、「該当する労働者がいない」ということは、「該当する労働者がいないと感じているだけ」で、だから対策する必要性を感じない、感じないから対策しなくても良いと言った、悪循環を起こし、いざメンタルヘルス不調となった仲間が出た場面に出くわした時に困ることにつながるのです。

 

メンタルヘルス対策に取り組む予定は?

メンタルヘルス対策に今後取組予定事業所割合

上記、メンタルヘルス対策に取り組んでいない企業が、今後取り組む予定があるかどうかの調査結果では、予定があるが1.7%、検討中が19.9%、予定はないが72.0%と回答しています。

これは、上記のように、「必要性を感じていない」という企業が多いからではないでしょうか?

しかし、昨今では、経済産業省が中心となって、東京証券取引所と共同で、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組む上場企業を、原則1業種1社「健康経営銘柄」として選定する取り組みを実施しています。

また今年度から、日本健康会議と共同で、上場企業に限らず大規模法人のうち保険者と連携して優良な健康経営を実践している法人について、2020年までに500社を「健康経営優良法人(ホワイト500)」として認定する制度もスタートします。

さらには、政府が中心となって働き方そのものを考える、働き方改革実現会議も第7回を超え、働き方に対する法律の制定に向けて、スタートしようとしています。

社会の流れが、高度成長期の大量生産大量消費に伴う働き方から、人生の質(quality of life)を考えた働き方へ移行しているのです。

 

健康経営の目的

これからは、ますます労働人口が減り、経営資源である「ヒト・モノ・カネ」のうち最も重要な「ヒト」の確保が今以上に困難になっていくことは明らかです。「ヒト」から選ばれない企業は、衰退していく可能性が高いということでもあります。

健康経営とは、「従業員の健康保持・増進の取組が、将来的に収益性等を高める投資であるとの考えのもと、健康管理を経営的視点からとらえ、戦略的に実践すること」と定義づけされます。

また、SUDACHIが考えるように、企業の業績を上げるため、ブランド力を強化するためといった単純な「投資」ではなく、家族を愛するように、企業と企業を支えるスタッフ・そのご家族を守り、幸せに導く「愛情」とも捉えることができます。

このような背景を踏まえ、健康投資に取り組み、個人の人生の質(quality of life)を考え、愛情に溢れる企業こそが、今後「ヒト」から選ばれる企業になっていくのだとSUDACHIは考えます。