先日、ふとインターネットの記事を見ていると、「人の一生を80年と考えた場合に、人は22時間30分しか笑わない」という記事をみつけました。
その中には、「子供の頃は1日に平均400回以上笑っていたのが、大人になると平均6回になる」という事が記載されており、意外と少ないことに大変驚きました。
私達は、時として落ち込んだり、つらい状況に直面することがあります。そのときに必要なのが「笑い」だと思います。
皆さん、ふとした瞬間、誰かの笑顔で元気がもらえたという経験はありませんか?今回はこの笑いと健康について考えていきたいと思います。
笑いとは何か?
笑いとは何かということで、調べてみると、
「楽しかったり、嬉しかったりなどを表現する感情表出行動の一つ」
と記載されていました。
また笑いは一般的に快感という感情とともに生じ、感情体験と深くかかわっており、笑いは感情表現の中でも極めて特殊なものであり、すぐれて人間的なものであるという風にも記載されていました。
確かに、感情は動物にもありますが、笑うのは人間だけができる特殊能力です。古くから「笑う門には福来る」ということわざもあるように、笑いは幸福には何らかの関係がありそうです。そして笑う事が、人間の心身の健康にとても重要な役割も果たしていると思います。ここからは笑うことが我々の身体にどのように効果をもたらすかを紹介していきたいと思います。
笑いと健康効果
笑いの健康効果については、いろいろな研究で確かめられています。先ほど、「笑う門には福来る」と言いましたが、「笑う門には福だけでなく健康もやって来る」のです。笑いにはお金も手間もかかりません。笑うことのメリットを知りたくさん笑ってどんどん健康になりましょう!
(出典、引用参考文献)大平哲也:認知症予防を目的とした笑いの効果についての実践的研究、日本生命財団研究報告書(2009)
(出典、引用参考文献)Diabetes Care.2003;26:1651-1652. Personalized Medicine Universe.2012;1: 2-6
①免疫力がアップする
笑うことは免疫力を大いにアップさせることが知られています。「免疫」と一言で言っても、実は数種類のタイプが入り混じって存在しています。そして、これら免疫の中でも 細菌やウイルスなどの病原体から人体を守る “免疫の要” の役割を担っているのが、NK細胞(=ナチュラル・キラー細胞)と B細胞と呼ばれるモノたちです。そして、笑いによって数が増え 働きが活性化するのも、このNK細胞とB細胞なのです。(※ 癌患者に漫才を見せて大笑いさせたところ、NK細胞が85%〜600%も増加したというデータがあります。なお一般的には、笑いの度合いが大きくなるほど免疫力が高まるとのこと。)
また笑顔でいる人といつも不機嫌な人では、寿命が平均7年違うという報告もあります。体内には毎日あらゆるウイルスが侵入し、がん細胞が発生しています。しかし、人間は笑う事によって、副交感神経と交感神経が頻繁に切り替わり、体内の器官や脳に刺激が伝わります。これにより、神経ペプチドという免疫機能を活性化させるホルモンが分泌されて、免疫力がアップします。もちろん笑顔でいるだけでも、効果を十分に発揮します。
②脳の働きが活性化、認知症予防にも効果あり
脳の海馬は、新しいことを学習するときに働く器官です。笑うとその容量が増えて、記憶力がアップします。また、”笑い”によって脳波のなかでもアルファ波が増えて脳がリラックスするほか、意志や理性をつかさどる大脳新皮質に流れる血液量が増加するため、脳に必要な酸素や栄養素が供給され、脳の状態は良好に保たれ、活発になります。
大阪大学大学院の大平哲也准教授らが、65歳以上の高齢者を対象におこなった研究では、「ほとんど笑う機会がない人」は「ほぼ毎日笑う人」に比べて、2.1~2.6倍ほど認知機能が低下するリスクが高くなるという結果も見られたとのことです。笑いによる認知症治療やリハビリ・予防効果が医療や介護分野で注目されています。
③アレルギーを改善させる
笑うことには、アトピーを含む各種アレルギーを改善させる効果があります。アレルギーの原因は体内のIgE抗体による作用だと言われていますが、笑うことで このIgE抗体が減少することが突き止められています。治療に「笑い」を取り入れたアトピー患者のグループは90%の患者が完治した反面、「笑い」を取り入れなかった患者のグループは10%しかアトピーが完治しなかったという報告もあります。
④自律神経のバランスが整い、ストレスが解消される。
自律神経には、体を緊張モードにする交感神経とリラックスモードにする副交感神経があり、両者のバランスが崩れると体調不良の原因となります。通常起きている間は交感神経が優位になっていますが、笑うと副交感神経が優位になるので、交感神経とのスイッチが頻繁に切り替わることになり、自律神経のバランスが整います。笑顔(笑うこと)によって、脳内に「エンドルフィン」「ドーパミン」「セロトニン」といったホルモンが分泌されます。これらのホルモンにより、ストレスが解消しやる気やモチベーションの向上、プラス思考といった効果をもたらしてくれます。
⑤鎮痛作用
上記でも述べましたが、笑うと脳内ホルモンであるエンドルフィンが分泌されます。「エンドルフィン」は、幸せな気分にしてくれる他に鎮痛作用もあります。モルヒネの6倍もの効果があると言います。リハビリの場面で痛みを訴えている人が、笑っている時だけは痛みを忘れられるということも良く利用者さんから耳にするので、この鎮痛作用は私も納得出来ます。
⑥血糖値の上昇を防ぐ
こんな興味深い研究がありました。笑いの健康効果を研究している東京家政大学の大西淳之准教授らが、「お笑い」で有名な吉本興業の協力のもと、糖尿病患者を対象におこなった実験では、単調な講義を聴いたあとに比べて、漫才を鑑賞したあとのほうが血糖値の上昇が大幅に抑えられるという結果が出たそうです。
笑うことで「コルチゾール」のようなストレスホルモンが減少します。「コルチゾール」は血糖値を上げてしまいます。「コルチゾール」を減少させることは、過剰な血糖値上昇が抑制され、糖尿病予防に効果があります。
⑦仕事が円滑になる
仕事をする上では、人とコミュニケーションを取る事が重要になります。人とコミュニケーションを取るのに、笑顔は欠かせません。笑顔で仕事をする人は、雰囲気が良いです。その人が居るだけで、不思議と空気が和みます。笑顔で過ごせる人の周りには人が集まってきます。上司の立場である人にも笑顔で接していると、「この人になら仕事を頼める!」と思われ、新しい仕事を回してもらえるでしょう。また笑顔は、「あなたに敵意はありませんよ」と言う事を相手に伝える役割もあります。
ある研究によると、笑顔を見せた人は気前の良さと社交性の両面において高い評価を得ることができるそうです。また、あなたを信頼していますというサインとして笑顔は効果的であり、その笑顔を通じて相手も信頼をおき、協力関係を築きやすくなります。あなたの笑顔がコミュニケーションを円滑にし、新しいパワー、仕事を生み出すのです。
健康と笑いについてのまとめ
笑顔には、こんなにもたくさんの効果があり、まさしく「万能薬」と言ってもよいでしょう。場所や時間を気にすることなく、お金もかからないので、本当におすすめです。また、みなさんにも嫌なことがあって辛いときに、笑いに救われた経験があると思います。笑顔には、気持ちを明るくしてくれる効果もあります。
「今更そんな風に振舞えない!」と思う方は、まずは笑顔で元気良く挨拶をする事から、始めてはいかがでしょうか。それだけでも、十分な効果に繋がります。そうすると、同じ職場の人に良い印象を与え、仕事は効率良く進みます。
笑いによって仕事が効率よく進むということは、笑いはコストがかからない健康投資ということであり、まさしく健康経営のスタートアップとも言えます。
笑って過ごしても、怒って過ごしても、時間は同じように過ぎるのなら、心穏やかに笑って過ごしたほうがずっと良いのは確かなことです。
つまりは、人生、笑った者勝ちなのです!
ライター:西野大助
富山医療福祉専門学校理学療法士学科卒業
【理学療法士】
リハビリ専門職である理学療法士国家資格取得後、約10年富山県内の総合病院で急性期医療から回復期医療、在宅医療のリハビリに従事。その後SUDACHIに入社。パーソナル事業部の責任者を務め、主にパーソナルトレーニングや集団でのパフォーマンス指導や姿勢指導、傷病予防などの分野を担当している。また、病院在籍中から現在にかけてスポーツ分野での障害予防などにも積極的に取り組んでいる。
最近結婚し、仕事でも家庭でも頑張ろうと意気込んでいる。