健康経営とメンタルヘルス④

今回も健康経営とメンタルヘルスについて考えていきたいと思います。

今回は、日本生産性本部「メンタル・ヘルス研究所」が、2002年から企業のメンタルヘルスの取り組みに関するアンケート調査を実施しており、第7回『メンタルヘルスの取り組み』関する企業アンケート調査結果(2014年)から、メンタルヘルス(心の病)の現状を考え、健康経営とメンタルヘルスについて弊社の見解を添えて考えていきたいと思います。

 

メンタルヘルス〜心の病の現状〜

「心の病」の増減傾向

2002年 2004年 2006年 2008年 2010年 2012年 2014年
増加傾向 48.9 58.2 61.5 56.1 44.6 37.6 29.2
横ばい 24.8 25 29.4 32 45.4 51.4 58
減少傾向 3.5 1.9 1.8 4.5 6.4 7.8 9.2
わからない 20.9 13.4 7.3 5.6 2.8 1.8 2

出所:日本生産性本部「メンタル・ヘルス研究所」第7回『メンタルヘルスの取り組み』関する企業アンケート調査結果(2014年)

3年間における「心の病」の増減傾向』を見ると、「増加傾向」と回答した企業が29.2%と、前回調査の37.6%から減少し、3割を下回っています。一方、「横ばい」と回答した企業が58.0%と、前回の51.4%、前々回の45.4%から増加傾向が続いています。過去8年間の結果を見ると、「増加傾向」の割合は減少しているが、2010年の調査からは「横ばい」が「増加傾向」を上回るようになり、その傾向は年々一層上昇傾向にあります。一方で、「減少傾向」にある企業は10%に満たず、微増にとどまっているのです。

このデータをどう捉えるかによって、大きく考え方は変わるのでしょうが、政府や企業の様々な取り組みによってメンタルヘルス不調者の新たな増加を食い止めている一方で、一度心の病になってしまった人の改善にはとても労力を有すると読み取れます。予防という観点は少しずつ浸透している一方で、メンタルヘルス不調になった人に対しての対策、つまり職場復帰などの対策は不十分というデータではないでしょうか?

これは、冷静に考えるとごく自然なことであると考えられます。以前の記事、「健康経営とコスト」でも述べたように、一度メンタルヘルス不良などとなり休職してしまう状態となると、ヒト・モノ・カネに多大なコストが掛かることになります。企業とすれば、コスト増加を未然に防ぐことができる予防に重点を置くことに舵をとることは自然なことです。

しかし、リハビリテーションの世界で様々な患者様と接してきた筆者の経験上、予防と治療はとても類似しているところがあり、治療の観点を知ることは予防の観点をより知ることになる繋がります。

例えば、どんなに健康に気をつけていても、風邪を引いたり不慮の事故にあったりすることはあります。筆者もスポーツ経験があり(現在も現役)、今までに多くの怪我をしてきました。特に左の足首に関しては幼少期から捻挫を繰り返し、一時期は歩くだけでも痛みを感じていました。リハビリテーションの知識を基に、治療の観点から可動域の運動や筋力トレーニング、足のアライメント(形)に対しての治療を実行していき、痛みは今現在全くありません。但し、そこには治療で行った足のアライメントに対しての予防対策としてインソールの使用を継続しており、治療で行なっていたことが今現在予防にも繋がっているのです。

治療の観点を知ることにより、予防への取り組みが加速するのです。

 

メンタルヘルス〜心の病の多い年齢〜

「心の病」の最も多い年齢層

2002年 2004年 2006年 2008年 2010年 2012年 2014年
10-20代 13.1 10.4 11.5 10.8 13.9 18.8 18.4
30代 41.8 49.3 61 59.9 58.2 34.9 38.8
40代 27 22 19.3 21.9 22.3 36.2 32.4
50代 9.6 5.6 1.8 3 1.2 3.2 4.4

出所:日本生産性本部「メンタル・ヘルス研究所」第7回『メンタルヘルスの取り組み』関する企業アンケート調査結果(2014年)

それでは、「心の病」が多いのは、どの年齢層なのでしょうか?これまでは「30代」の「心の病」が突出して多かったが、2012年の調査では40代(36.2%)が、30代(34.9%)を上回りました。しかし、2014年の調査では30代が38.8%と、再び最も多い年代となったのです。しかし、40代も32.4%と依然として多く、中間管理職や部下ができ上下関係に悩んでいる年代がメンタルヘルス不調にかかる割合が多いということがみてとれます。

ただし、近年は10-20代の割合も18.4%と2割近くを占めるようになり、「心の病」を課題とする年代が若年層や新入社員層にまで広がっていることがわかります。

このデータからは、新入社員層へのメンタルヘルス対策について実施することが今後必要であるということを読み取ることができます。超少子高齢社会を迎え、優秀な人材の確保は企業において継続的な課題に成りつつあります。今現在、就職活動が最盛期を向かえていますが、学生が企業に対し求めることや欲しい情報の上位は、休日や残業などへの対策といった福利厚生に関わる部分です。SNSなどのコミュニケーションツールが発達した昨今では、企業の様々な取り組みを学生同士で共有するといったことがあります。このような背景の中で、新入社員層へのメンタルヘルス対策を実施していくことは、健康投資や生産性向上、コストの抑制、企業ブランドイメージの向上につながり、人材確保につながっていく可能性があります。

一方で、やはり管理職年代のメンタルヘルス対策をさらに充実させることが大事であることがわかります。上記のように、新入社員層へのメンタルヘルス対策に対する知識や技術も必要であり、且つ自分の上司とのコミュニケーション能力などといった、自分がメンタルヘルス不調にならないための知識や技術も必要となります。企業において管理職は非常に考えることの多い役割であり、管理・マネジメントという観点からは、昨今のニュースなどでも取り上げられているように、長時間労働などが原因で従業員が精神疾患に罹患し、企業の過失が認められると、損害賠償責任を問われることになるため、メンタルヘルスに対するマネージメント能力も求められる時代となってきています。

 

メンタルヘルス研修として

メンタルヘルス対策研修には、スキルを学ぶものや考え方を学ぶものなど様々なものがありますが、弊社の「ビジネスゲーム:健康経営ゲーム」を使用した研修・セミナーでは、管理職の方に是非体験していただきたい要素が多く含まれています。

健康経営ゲームでは社長や人事、管理職や社員といった役割に振り分けられ、それぞれの役割を模擬体験することができます。そして、役職には役職ごとの目標設定が書かれており、全体のゴールと個人の目標を達成して初めてゲームクリアとなる仕組みとなっています。そして何より、1役職の力のみでは決してクリアができない仕組みで作られており、他チームと協力することで初めて成果を上げられます。コミュニケーションがゲームのカギとなっているのです。

このために、自分自身が管理者の役割を演じることで社員に対しての精神や体力などといった健康管理に対してのメネージメントについて考えたり、社員のモチベーションを上げるにはどのようなアプローチがあるのか、または、社員の役割を演じることによって上司がどのように接してくれたら働きやすいかなどを考えたりすることができます。また、ビジネスゲームの特徴である「模擬体験」を経験することによって、例え失敗した経験だとしても現実社会でその経験を活かすことができます。

さらには、管理職の方々に経営を理解してもらう、実績管理のマネジメント能力を向上させるための要素も含んでいます。「ビジネスゲーム健康経営ゲーム」はゲーム研修・セミナーであることから、ゲーム終了時のゴール設定がなされています。経営という観点から売り上げを1億円にするといったゴール設定です。企業経営を模擬的に経験することによって、企業の目的の一つである利益の追求に対する考えを学ぶことができます。

このように、管理者には多様なマネジメント能力が必要になりますが、企業の成長を考える上で、ヒトを大事にするといった観点から、メンタルヘルスに対するマネジメント能力も必須となります。

健康経営ゲームを通して、実績管理や自己管理、モチベーション管理、メンタルヘルス対策管理などの要素を管理者の方には考えていただきたいとSUDACHIはご提案します。