スタッフの西野です。4月に入り、桜もきれいに咲いてきました。少しずつ暖かくなってきたので、少し外へ出て身体を動かしていこうという時期になってきました。
暖かくなってきたと同時に、私達が気をつけていかなれければいけないことの1つに、水分摂取と脱水症状があります。「まだ4月だし、気にしなくても大丈夫」という声も聞こえてきそうですが、脱水状態は、年間を通して誰にでも、どこでも起こり得ることなのです。
また、風邪も脱水症状の引き金になります。寝込んで水分の摂取量が減るうえ、熱による発汗で水分が失われてしまうからです。インフルエンザやノロウイルスなどによる下痢や嘔吐も、体内の水分不足を引き起こしてしまいます。このように、脱水症状は私たちのごく身近にある危機なのです。
このような観点から、今回は健康と水分摂取・脱水症状について考えていきたいと思います。
身体の水分と健康へ影響について
私たちが生きていくために「水分」は欠くことのできない存在です。成人男性では、身体の約60%は水分でできています。体重60kgの人では水分は実に約36kgにもなります。お年寄りでは50%、新生児では70~80%と、年齢によって割合に変化がみられます。
人間は体内の2%の水が不足しただけでも脱水症状を起こすともいわれています。普通に生活しているだけでも私たちは1日に2.5ℓの水分を失っており、食事や体内で作られる水のほかに、約1.2ℓを摂取しなければ水分不足の状態になってしまうのです。汗で出ていった水分が補給されなければ、やがては危険な状態に陥ってしまいます。それを防ぐためにもこまめな水分摂取は欠かせません。
水分が体内で果たす役割は、
①血液の循環
②尿の生成や水分量の調節
③体温の調節
の3つに分けることができます。
水分摂取が不十分であることによって、健康への障害として多くの悲劇を引き起こします。子供や高齢者、スポーツをしている人に伴う熱中症が代表的な障害です。また、身体が脱水状態になっているということは、血液の水分の割合が減って、粘度が増してドロドロの状態になっているため、血液の流れと関係の深い病気である脳梗塞・心筋梗塞なども水分摂取量の不足が大きなリスク要因のひとつとなっています。これら脱水による健康障害や重大な事故などの予防には、こまめな水分摂取が効果的です。
厚生労働省でも、健康維持のためにお水を飲み、脳梗塞や熱中症などの事故から私たち人間の命を守ろうという目的で「健康のため水を飲もう」推進運動を行っています。脱水症状を起こすと、酸素や栄養素がうまく体内に行き渡らなかったり、老廃物を排出することができなくなったり、体温をうまく調整できなくなったりするなどの問題が生じます。発見が遅れると命にかかわることもあるので、私達は水分摂取や脱水症状について知識を備えておく必要があります。
脱水症の初期症状について
脱水症状になると、さまざまな症状があらわれて、悪化すると意識障害を起こすこともあります。脱水症状の初期症状として注意すべき症状には以下のようなものがあります。
・喉の渇き、口内の渇き、ねばつき
・筋肉が疲労して、筋痙攣を引き起こす
・頭痛、めまい、吐き気などが起こる
・脱力感、倦怠感が出てくる
・大量の発汗などが起こる
・集中力が低下する
・尿量低下、尿の色が濃い黄色になっている。
これらの症状が出たら、脱水症状の危険信号になります。そのまま放置しておくと脱水症状から熱中症へと症状が移行していきます。
脱水症状の予防について
脱水症は、治療よりもまず予防に努めることが第一です。予防の要は、水分摂取」とミネラル補給です。
水分摂取
とにかく、こまめに水分をとるようにしましょう。とくに就寝前や起きてすぐ、入浴する前後、運動をする前後、運動中、そして飲酒後は、必ず水分を摂るようにしてください。
発汗や排尿だけでなく、皮膚表面や呼吸などからも水分は排出されていきます。運動をしていなくても、私たちは1日に2ℓほどの水が排出されています。
「汗をかいていないから」「トイレに何回も行きたくないから」水分をとらないという人もいますが、脱水症を防ぐためにも水分摂取は怠らないでください。先ほども述べましたが、人間は体内の2パーセントの水が不足しただけでも脱水症状を起こしますから、数ℓもの汗が出ていったまま摂取されなければ、やがては危険な状態に陥ってしまいます。それを防ぐためにもこまめな水分摂取は不可欠なのです。
ミネラルの補給
水分だけを補給していると、自発的脱水と呼ばれる症状を起こすことがあります。これは、大量の汗をかいたときに 水のみを補給することで血液中の塩分が薄まり、「これ以上水は要らない」という指令が脳から出てしまうことです。
この状態になると、身体は体液の濃度を元 に戻すべく水分を体外に排出してしまうので、結果的に脱水症を引き起こします。そのため、水分とともにミネラルを補給することが大切です。筋肉や心臓の機能維持にとって不可欠なミネラルであるカルシウムやナトリウムなどが、汗によって体外に出て不足すると、筋肉が痙攣してこむら返りが起きたり、急激に心拍数が上がったりします。またカルシウムやマグネシウムの不足は精神の不安定を招きます。集中できなくなったり、イライラしやすくなるのもミネラル不足が原因と考えられています。
改めて水分摂取のポイント
水分摂取のタイミング
のどの渇きを感じたときは、すでに脱水症状が始まっているので、早めに水分補給することが大切になります。1日のなかでも水分が不足しやすい「寝る前後」や「運動の前後」、「入浴の前後」「飲酒の後」などには、特に意識して水分を摂るように心がけてください。
適切な水分摂取量
1日に必要となる水分摂取量は1.5リットルから2リットルくらいといわれています。これはあくまで目安の数値です。体型・体質・生活習慣によっても変わってきます。暑い場所に長時間居続けていたり、運動などをして汗をかいた場合は、さらに多くの水分が必要となります。また、糖尿病にかかっていたり、利尿作用が働く薬を服用している時も、水分摂取量が2リットルでは足りないこともあります。
こまめに水分を摂取する
一気に水分を補給すると大量の排泄につながってミネラルを失うので、何回かに分けて飲むことが大切です。多過ぎる水分が体に急激に入ることで水毒症を起こします。水毒症も急激な体内の水分バランスの変化で重篤な症状を引き起こすことがあります。また血液濃度を上げようと、脳が腎臓に尿をたくさん出すように指令を出して、腎臓を疲れさせることもあります。腎臓への負担を減らすためにも、こまめに水分摂取するようにしましょう。
水分の温度
身体の活動に適した水分の温度は、5℃~15℃だといわれています。冷たすぎる温度は、飲みにくく感じて水分摂取が進まなくなり、水温が高いと身体への吸収力が少なくなりますので、適温で水分を摂取しましょう。
水分摂取に適した飲み物
通常の健康な状態での水分摂取では、水やお茶を飲んで問題はありません。しかし、大量の汗をかいたときは、水分とともに塩分などのミネラルが失われるため、水だけを飲むと体液を薄めることになり、身体は余分な水分を排出しようと働きかけて脱水を進めることも考えられます。気温が高い中の野外での活動や、激しい運動などによる発汗時の飲み物は、水分、塩分、糖分がバランスよく配合され身体への吸収もよい、経口補水液が最適です。スポーツドリンクと比べても、糖分が少なく塩分量に配慮されています。
日本体育協会では、熱中症予防の水分補給として0.1~0.2%の食塩(ナトリウム40~80ⅿℊ/100ⅿℓ)と糖質を含んだ飲料を推奨しています。市販のイオン飲料や経口補水液の他、1リットルの水に対して小さじ半分(3ℊ)の食塩と40ℊ(大さじ4杯)の砂糖を加えると、自分で調製することもできます。ただし、高血圧の方では塩分を取りすぎると血圧が上昇したり、糖尿病の方では糖分を摂取しすぎると糖尿病が悪化したりすることがあるので、持病のある方は主治医の指示をあおいでください。
水分摂取に適さない飲み物
反対に汗をかいたあとの飲み物に不向きなものは、カフェインの含まれる緑茶やウーロン茶です。カフェインには利尿作用があり、水分とミネラルの排出を促すため、より多くの水分が体内から失われてしまうおそれがありますので注意してください。もちろんアルコールも利尿作用がありますので、アルコールで水分を補おうとしないでください。
健康と水分摂取のまとめ
今回は水分摂取と脱水症状についてお話ししてみましたが、いかがでしたでしょうか。私自身も、仕事中はついつい、夢中になってしまうので、水分を摂取を忘れることもあります。また栄養バランスには気をつけていても、水分摂取はあまり気にしていないという人も多いのではないでしょうか?
冒頭にも述べましたが、私たちが生きていくために「水分」は欠くことのできない存在です。水分は体内でさまざまな役割をしていて、体温調節をしたり筋肉を動かす働きをしたりするほか、血液として栄養素を全身に運んだり、汗や尿として老廃物を体外に出すなど生命維持に欠かせない大きな役割を担っています普段あまりお水を飲まないという方も、水分摂取・脱水症状について正しい知識を持ち、毎日こまめにお水を飲む習慣をつけ、健康な身体を作っていきましょう。
ライター:西野大助
富山医療福祉専門学校理学療法士学科卒業
【理学療法士】
リハビリ専門職である理学療法士国家資格取得後、約10年富山県内の総合病院で急性期医療から回復期医療、在宅医療のリハビリに従事。その後SUDACHIに入社。パーソナル事業部の責任者を務め、主にパーソナルトレーニングや集団でのパフォーマンス指導や姿勢指導、傷病予防などの分野を担当している。また、病院在籍中から現在にかけてスポーツ分野での障害予防などにも積極的に取り組んでいる。
最近結婚し、仕事でも家庭でも頑張ろうと意気込んでいる。