健康経営と評価指標④

何回かご紹介している、健康経営銘柄の「評価のための5つのフレームワークと具体的な評価指標例」のうち評価・改善について、今回は考えてみたいと思います。

実際に施策を実行した内容について、具体的な数字を元に評価し、改善することはどの業態、業種でも必要なことです。

現在をしっかりと把握することから、未来の改善は始まります。

 

健康経営の評価

健康経営の評価・改善については、

• 従業員の健康保持・増進を目的とした施策の効果検証の方法

• 取り組みによる健康状態や医療費、生産性等の具体的改善効果

• 効果検証を踏まえた次年度の取組改善の実施状況

が健康経営銘柄の評価に位置付けられています。

 

経済産業省が公開している「健康経営銘柄2017レポート」によると、

株式会社ワコールホールディングス様では、喫煙率は2012年度22.0%から2015年度19.1%に改善。精密検査の受診率は、2012年度61.7%から2015年度78.1%に向上し、「健康経営委員会」では、効果検証と対応策の立案というPDCAサイクルを継続的に推進しているとされています。

伊藤忠商事株式会社様では、2013年度に導入した朝型勤務が、導入3年後の成果として、20時以降退館者の割合は30%から5%に減少(22時以降はほぼゼロ)し、8時以前入館者の割合は20%から45%に増加。 年間所定外労働時間は約15%減少したと報告されています。

どちらの企業も、実践した取り組みが即効性を持つものではなく、数年にかけて効果が現れ、結果数値として改善していることがわかります。

 

健康経営と「問題志向型システム(POS:Problem Oriented System)」

これまでの、健康経営銘柄「評価のための5つのフレームワークと具体的な評価指標例」をご紹介しながら、医療や介護のリハビリテーションの現場から誕生した弊社は、「これは何かと似ているな」と考えるようになりました。
それは、現在の医療などでの主流である、「問題志向型システム(POS:Problem Oriented System)」=患者様が持つ課題(問題点)に沿って治療が実行されていく治療過程の記録方法、SOAPに似ているということです。

SOAPは、

S(Subject)=主観的情報

患者様の訴えていること。

O(Object)=客観的情報

所見や診察・検査から得られたS以外の情報。

A(Assessment)=アセスメント

SとOの情報に対し、考えたこと。

P(Plan)=計画

Aに対し必要だと思ったケアや処置、行動等。

といった4つの枠組みから成り立っています。

 

SOAPに当てはめると、O:客観的な情報(喫煙率や退社時刻・出社時刻の把握)に基づいて、A:アセスメントし(自社に必要な施策は何か考え)、P:プランを立て(実行計画を立てて行動)、再度S:主観的な情報(アンケート等を実施)を行い、O→A→P→S→O→A→Pを繰り返していく過程と似ています。

患者様の問題点を把握し、一緒になって考え、計画を立て、感想を聞き、新たな問題点に立ち向かっていく。こうして、一歩ずつリハビリテーションはすすんでいきます。これは、企業活動においても何ら変わることはありません。

経営者や経営層が率先してビジョンや行動計画を立てても、現場に合致していなければ上手くPDCAサイクルや施策は回りません。健康経営は誰のためか。それは、社員のためであり、企業の存続のためです。社員のS:主観的情報=意見が評価に反映されてこそ、健康経営は成り立つのではないかと弊社は考えています。

 

健康経営は永年事業

健康経営は、短期的な事業ではなく、長期的かつ永年的な事業であることは、超少子高齢社会の到来とともに今後ますます周知されていくことが予想されます。その際に、健康経営銘柄の「評価のための5つのフレームワークと具体的な評価指標例」を参考に、自社のPDCAサイクルやSOAPなどの評価を継続して行っていくことが必要です。

時間はかかりますが、しっかりと腰を据えて健康経営に取り組み、自社の強みとして根付かせることが必要なのです。