健康経営とは、「企業が従業員の健康に配慮することによって、経営面においても大きな成果が期待できる」との基盤に立って、健康管理を経営的視点から考え、 戦略的に実践することを意味しています(健康経営研究会より)。
イメージ的には、運動にポイントをつけて会社組織で心身の健康管理を行う、残業時間削減などの働き方改革と関連付けて労務対策として実施するなどの施策中心に語られることが多いのではないでしょうか?。
多くの施策が取り上げられていますが、本当に大事なことは自社の課題、課題解決にあったコンセプトや目的です。
今回は健康経営取組の目的について考えてみたいと思います。
健康経営の失敗例
健康経営の取り組みとして、良くある失敗例として以下の事例が考えられます。
1.無理やり健康習慣を押し付けてしまう。
・今まで福利厚生の一環として提供していたお菓子やインスタントコーヒーを、健康に良くないからといって一切やめてしまう。
→ 憩いの場が奪われた。あった方がよかったのに・・・。
・デスクワークを立って行った方がよいと、スタンディングディスクを採用する
→ この上さらに立って働けというのか・・・。
従業員のヘルスリテラシーが高いわけではない状態での一方的な施策は、逆にストレスをあたえてしまい逆効果であることが多く、現場レベルでの納得感を得られにくいといった事が考えられます。
2.とりあえず出来る範囲での環境整備や施策の実施
・ウェアラブル端末の配布にて健康の見える化
→ 今の状態が分かったのはいいけど、不安になるだけで心配が増えて仕事にならない・・・。
・健康診断結果の集計
→ 自社の現状は分かったけど、何から手をつけたらいいのか・・・。
・健康イベントの開催
→ 面白かったけど、なかなか習慣にはならないなぁ・・・。
とりあえず、見える化だ!といって分かった現状によって、行う業務が増えたり、何が一番の問題なのかが把握できない状況に陥ったり、とりあえず行った施策が現状に合っていなかったりすると単発での実施に留まり継続的な改善につながらない事が考えられます。
3.病気を抑制する施策に重点を置いてしまう
・健康管理の徹底や生産性の向上、健康の定義に沿っての対応に着目しない
攻めの健康(元気・活力を上げる)である、何かをする・足す・選択肢を増やす施策ではなく、守りの健康(病気のリスクを下げる)施策ばかりに着目するあまり楽しく取り組むことが出来ず、継続した取り組みにならない事が考えられます。
健康経営を推進する目的は?
健康経営推進の目的は、「企業が従業員の健康に配慮することによって、経営面においても大きな成果が期待できる事」つまりは、「人材」の獲得・力量発揮、「資金」や「信頼」の獲得、そして「生産性」を高めることであるといえます。
この「人材」「資金」「信頼」「生産性」のどれが自社にとっての健康経営の課題か、もしくはより強みを高めて行く上でのコンセプトに成り得るのかを考えて、目標設定をし施策を選ぶ必要があります。
例として
「生産性向上」を自社コンセプトにするのであれば、プレゼンティズムによる労働損失の軽減(睡眠不足自覚症状の〇〇%軽減、腰痛自覚症状者の〇〇%軽減など)、アブゼンティズムによる労働損失の軽減(健康診断受診率の〇〇%達成など)を、
「信頼」を自社コンセプトにするのであれば、企業ブランドの健康経営優良法人等の認定取得、従業員満足度の〇〇%達成、社内外への情報発信〇〇件/月などを目標設定にするなど、自社の健康経営のコンセプトに沿って目標設定を行う必要があります。
コンセプトの把握には目に見える数字や、見えにくい数字をアンケートなどによって把握し、自社の課題をハッキリさせる必要があります。
自社のコンセプトをしっかりと把握し、コンセプトに合った目標設定をし、数字化することで初めて取組の効果検証が可能となるといえます。理念経営と同じように、健康経営にも理念やコンセプトが必要なのです。